パックス アメリカーナ。 [現代アメリカ経済] 2

パックス・アメリカーナ(アメリカの覇権)がもたらすドル高はこれから佳境に入っていく|世界投資へのパスポート|ザイ・オンライン

パックス アメリカーナ

特に、トランプ氏は安全保障における知見に乏しく、彼がいかなる安全保障政策を確立するかは、世界の平和と安定にとって極めて重要な問題である。 そのような状況において、トランプ氏の安全保障政策、特に対外政策を予想し、その予想に基づき我が国は如何に対処すべきかを考えてみた。 なぜトランプ氏は勝利したか ドナルド・トランプ氏の勝利の要因を分析することは、彼の今後の政策を占ううえで重要である。 米国でも様々な視点から彼の勝利の要因に関する議論がなされているが、私も1年半にわたって大統領選挙を観察してきたので、自らの意見を述べたいと思う。 結論的に言えば、トランプ氏勝利には複数の要因が混然一体と関係しているので、以下その複数の要因を説明する。 ・選挙結果に最も影響を与えた直接的要因 ジェイムズ・コーミーFBI長官のメール問題再捜査の発表が決定的な要因だった。 ヒラリー・クリントン氏自身が大きな要因として挙げている。 コーミー長官の捜査再開の発表前には10ポイント以上あった両者の支持率の差(クリントン氏有利)が、発表後に2ポイント以下の僅差になってしまった。 その発表のタイミングは、形勢を逆転させるのに絶妙なタイミングであった。 ヒラリー陣営はその劇的な変化を跳ね返すことができなかったことを選挙結果は示している。 私は、コーミーFBI長官のしでかした歴史的ミスの影響の大きさを現地において痛感した。 ・大衆迎合(ポピュリズム)の視点 トランプ氏の直観的で単純明快なポピュリズムの戦術が成功した。 つまり、分断国家米国の分断<マジョリティである白人とマイノリティであるイスラム教徒、ラティーノ(ラテンアメリカ系米国人)、黒人、アジア系との分断>を強調し、その分断をさらに広げる戦術が単純明快で低学歴・低所得の白人ブルーカラー層にピッタリはまった。 白人ブルーカラー層は、自分たちの本音や怒りを明快に代弁してくれるトランプ氏を熱狂的に支持した。 彼の単純明快な戦術は、分断をさらに大きなものにし、選挙後の反トランプ抗議行動の大きな要因になっている。 ・行き過ぎたリベラリズム(政府による弱者救済、マイノリティ救済)に対する白人の反乱 オバマ大統領の8年間で、政府による弱者救済・マイノリティ救済が行き過ぎた状況であるという認識に基づく白人の反発が爆発した。 例えば、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスセクシャル)の問題で、同性婚の合法化は保守層の反発が大きかった。 また、弱者救済の色彩の強いオバマケア(医療保険制度改革法)に対する根強い反発もあった。 共和党は、健康保険には本来自分で加入すべきであり、他人の健康保険のために自分が払った税金は使われたくないという思いが強かった。 また、ポリティカル・コレクトネス(人種や宗教に起因する差別を否定することを正当化すること)の行き過ぎに対する反発が白人の知識層にさえある。 例えば、大学の授業中の議論で人種差別的な発言を少しでもしたら、単位取得や就職にも影響が出るという話もある。 行き過ぎたリベラリズムやポリティカル・コレクトネスに対する白人(学歴貧富の差を問わず)の怒りが今回爆発し、トランプ氏勝利を導いたとも言える。

次の

[現代アメリカ経済] 2

パックス アメリカーナ

覇権国家がどのような原因で盛衰の歴史を辿るのかを論じた書物といえば、1987年に出版されたポール・ケネディの「大国の興亡」を思い浮かべる方も多いだろう。 1980年代のアメリカは、経済面では財政赤字と経常収支の赤字という双子の赤字問題を抱え、インフレと低成長に苦しんでいた。 国際政治では、アメリカとソ連による二極構造の支配的地位が揺らぎだしていた。 しかし、1990年代に入ると状況は大きく変わった。 1989年にベルリンの壁が崩壊し、1991年にはソ連が崩壊するとアメリカは唯一の超大国となる。 経済面でも、インターネットが登場してYahoo、AmazonやGoogleなどのハイテク企業が急発展し、金融工学的手法を駆使した新金融商品と金融技術の発展で金融産業が急拡大した。 IT革命によってアメリカ経済が復活したと多くの人が考え、ニューエコノミー論が唱えられるなど、もはや米国を脅かす国は現れないかに見え、覇権国家の興亡に対する人々の興味も低下したように思えた。 しかしここ数年、国家の繁栄と衰退の要因を考える書物が再び相次いで出版されている。 例えば、「国家はなぜ衰退するのか」(ダロン アセモグル、 ジェイムズ A ロビンソン)、「なぜ大国は衰退するのか」(グレン・ハバード、ティム・ケイン)、「人類5万年文明の興亡:なぜ西洋が世界を支配しているのか」(イアン モリス)などがある。 先進国経済の停滞 このような書物が話題になっていることは、パクス・アメリカーナを支えてきた構造が揺らいでいるという不安が高まったことが背景にあるだろう。 アメリカ経済は2008年に起きたリーマンショックによる経済の大幅な落ち込みからなかなか抜け出すことができず、その間に中国は急速な経済発展を遂げた。 中国の経済規模は2010年には日本を抜いて、世界第二の経済大国に躍り出た。 IMFが4月に発表した最新の予測では、2016年には中国の経済規模がユーロ圏を上回り、2020年には日本経済の3倍を超えるようになるとしている。 2013年には輸出入金額の合計で中国はアメリカを抜いて世界一になり、貿易面での存在感は既に極めて大きなものになっている。 2013年末に、IMFのセミナーでサマーズ元財務長官が、アメリカ経済が長期的な停滞に陥っているのではないかという疑問を投げかけ話題になった。 バブル崩壊後に日本経済が長期停滞したのは例外だとみていたが、先進諸国経済全般がおなじような症状を示しているようにも見える。 多極化する世界 出版されている書籍の全体的な論調を大胆にまとめれば、「現在のアメリカの置かれた状況はローマが自ら衰退の道を辿ったのとは異なっており、多様性を基盤とするアメリカ社会が持つ革新性は簡単には失われない。 自由や平等、民主主義を基礎とした経済・社会でなければ、国の発展には限界がある。 」といったことになるだろう。 「ソフト・パワー論」で有名なジョセフ・ナイは、今年に入って"Is the American Century Over? "(アメリカの世紀は終わったのか?)という、多くの人々が抱いている懸念そのものずばりのタイトルの本を出した。 アメリカは第二次世界大戦を契機に世界を主導する立場となったが、アメリカが唯一の超大国だという1990年代以降の状況は例外的だったとする。 そもそも常にアメリカには強力な対抗勢力があって世界を思い通りに動かしてきた訳ではないから、極論すれば、これまでよりもやっかいにはなるが、程度の違いに過ぎないという主張をしている。 アメリカが衰退の道を辿るわけではないとは言っても、「他の国々が発展する」(「アメリカ後の世界」ファリード・ザカリア)ことで相対的な関係は変わり、「リーダーなき経済」(ピーター・テミン、 デイビッド・バインズ)が言うように21世紀前半の世界は多極化の方向に進むだろう。 状況がこれまでとは大きく変わる中で、日本はどのような道を選ぶべきなのか、日本は将来についての大きな戦略を描くことが必要になっているのではないか。

次の

パックス・アメリカーナ(アメリカの覇権)がもたらすドル高はこれから佳境に入っていく|世界投資へのパスポート|ザイ・オンライン

パックス アメリカーナ

覇権国家がどのような原因で盛衰の歴史を辿るのかを論じた書物といえば、1987年に出版されたポール・ケネディの「大国の興亡」を思い浮かべる方も多いだろう。 1980年代のアメリカは、経済面では財政赤字と経常収支の赤字という双子の赤字問題を抱え、インフレと低成長に苦しんでいた。 国際政治では、アメリカとソ連による二極構造の支配的地位が揺らぎだしていた。 しかし、1990年代に入ると状況は大きく変わった。 1989年にベルリンの壁が崩壊し、1991年にはソ連が崩壊するとアメリカは唯一の超大国となる。 経済面でも、インターネットが登場してYahoo、AmazonやGoogleなどのハイテク企業が急発展し、金融工学的手法を駆使した新金融商品と金融技術の発展で金融産業が急拡大した。 IT革命によってアメリカ経済が復活したと多くの人が考え、ニューエコノミー論が唱えられるなど、もはや米国を脅かす国は現れないかに見え、覇権国家の興亡に対する人々の興味も低下したように思えた。 しかしここ数年、国家の繁栄と衰退の要因を考える書物が再び相次いで出版されている。 例えば、「国家はなぜ衰退するのか」(ダロン アセモグル、 ジェイムズ A ロビンソン)、「なぜ大国は衰退するのか」(グレン・ハバード、ティム・ケイン)、「人類5万年文明の興亡:なぜ西洋が世界を支配しているのか」(イアン モリス)などがある。 先進国経済の停滞 このような書物が話題になっていることは、パクス・アメリカーナを支えてきた構造が揺らいでいるという不安が高まったことが背景にあるだろう。 アメリカ経済は2008年に起きたリーマンショックによる経済の大幅な落ち込みからなかなか抜け出すことができず、その間に中国は急速な経済発展を遂げた。 中国の経済規模は2010年には日本を抜いて、世界第二の経済大国に躍り出た。 IMFが4月に発表した最新の予測では、2016年には中国の経済規模がユーロ圏を上回り、2020年には日本経済の3倍を超えるようになるとしている。 2013年には輸出入金額の合計で中国はアメリカを抜いて世界一になり、貿易面での存在感は既に極めて大きなものになっている。 2013年末に、IMFのセミナーでサマーズ元財務長官が、アメリカ経済が長期的な停滞に陥っているのではないかという疑問を投げかけ話題になった。 バブル崩壊後に日本経済が長期停滞したのは例外だとみていたが、先進諸国経済全般がおなじような症状を示しているようにも見える。 多極化する世界 出版されている書籍の全体的な論調を大胆にまとめれば、「現在のアメリカの置かれた状況はローマが自ら衰退の道を辿ったのとは異なっており、多様性を基盤とするアメリカ社会が持つ革新性は簡単には失われない。 自由や平等、民主主義を基礎とした経済・社会でなければ、国の発展には限界がある。 」といったことになるだろう。 「ソフト・パワー論」で有名なジョセフ・ナイは、今年に入って"Is the American Century Over? "(アメリカの世紀は終わったのか?)という、多くの人々が抱いている懸念そのものずばりのタイトルの本を出した。 アメリカは第二次世界大戦を契機に世界を主導する立場となったが、アメリカが唯一の超大国だという1990年代以降の状況は例外的だったとする。 そもそも常にアメリカには強力な対抗勢力があって世界を思い通りに動かしてきた訳ではないから、極論すれば、これまでよりもやっかいにはなるが、程度の違いに過ぎないという主張をしている。 アメリカが衰退の道を辿るわけではないとは言っても、「他の国々が発展する」(「アメリカ後の世界」ファリード・ザカリア)ことで相対的な関係は変わり、「リーダーなき経済」(ピーター・テミン、 デイビッド・バインズ)が言うように21世紀前半の世界は多極化の方向に進むだろう。 状況がこれまでとは大きく変わる中で、日本はどのような道を選ぶべきなのか、日本は将来についての大きな戦略を描くことが必要になっているのではないか。

次の