量子 コンピュータ。 量子コンピュータの基礎理論を厳密に理解するために 『みんなの量子コンピュータ』発売:CodeZine(コードジン)

量子コンピュータの現在とこれから

量子 コンピュータ

未来へ繋がる新世代のコンピュータ 昨今、一般のニュースなどでも聞かれる「量子コンピュータ」という単語。 エンジニアにとっても身近なものではないものの、ある程度は知っていて当たり前の存在です。 しかし、ニュースなどで取り上げられる機会が増えてきたため、エンジニアでなくとも量子コンピュータという単語だけは聞いたことがあるという方が増加していると考えられます。 今回の記事では、最近一般層にも注目され始めている 「量子コンピュータ」に注目していきます。 そもそも量子コンピュータって何なのか?というポイントはもちろんのこと、実用化されるとエンジニアにどんな影響を及ぼすのかという点についても注目。 原理や仕組みまで、分かりやすく解説していきます。 量子コンピュータに興味のある方はぜひご覧になってみてください。 量子コンピュータとは では早速、量子コンピュータとは一体どういうものなのかというポイントを解説いたします。 量子コンピュータについて簡単に言い表せば、その名の通り 量子力学的原理を用いて計算を行うコンピュータです。 古典コンピュータとの違い 量子コンピュータとこれまでのいわゆる「コンピュータ」とは何が違うのでしょうか。 元来のコンピュータは古典物理学を基にした計算を行っています。 この計算における方法の違いが、古典コンピュータと量子コンピュータの違いです。 そのため、量子コンピュータと比較して語られる際にはしばしば「古典コンピュータ」と表記されることが多いです。 今回の記事でもそれに倣い「古典コンピュータ」と表記していきます。 量子コンピュータは上位互換である 結論からいえば、量子コンピュータは古典コンピュータの上位互換といえる代物です。 古典コンピュータでできることは、量子コンピュータでも実現できます。 逆に、古典コンピュータでできないこと(複雑な計算など)や途方もない時間を要するものが量子コンピュータでは短時間で実現可能です。 計算能力は1億倍ともいわれているデータまで存在。 まさに量子コンピュータは 人類の未来を担う存在とまでいえる、 可能性に満ちている新世代のコンピュータといえることが分かります。 量子コンピュータの原理・仕組み それでは、これからは量子コンピュータの原理や仕組みを解説していきます。 少し専門的かつマニアックな技術分野に関する内容となりますので、じっくりとお読みください。 原理について完璧に理解しようとするととてつもなく時間を要しますので、ざっくりと簡単に解説いたします。 量子ビットは「0」と「1」両方になる まず原理として知っておきたいのが「ビット」についてです。 本来1ビットは「0」か「1」のどちらか一方にしかなりません。 しかし、1量子ビットは 「0と1」両方になれます。 つまり、従来とはそもそもビットが全く別物になってくるということです。 重ね合わせ 量子コンピュータでよく見られる「重ね合わせ」という言葉はこのこと。 これにより、2つまたはそれ以上の状態を 「同時に」表すということを実現できるということになります。 この量子ビットは 実際に観測するまで0なのか、1なのかということが分かりません。 これも1つの特徴であり、必ずどれかが「観測」されることになります。 確率的であり、観測するごとにこの結果が異なってくるという特徴があるということです。 同時に複数の結果を表せる 本来4ビットで情報を表そうとすると、16通りある結果のうち1つの結果しか出力できません。 しかし、量子ビットであれば16通り 全てを一度に表すことができてしまいます。 少ないビット数で膨大な情報量を扱えるという認識でもいいかもしれません。 仮に20量子ビットあれば、 100万通りを並列できます。 数字を見ただけでも量子コンピュータがとてつもない可能性を秘めていることが、少しでも分かるのではないでしょうか。 量子ゲート方式と量子アニーリング方式 量子コンピュータには2つの方式が存在しています。 それが「量子ゲート方式」と「量子アニーリング方式」です。 文字だけ見ても意味が分かりませんから、こちらも1つずつ簡単に解説します。 量子ビットや重ね合わせを使用する量子ゲート方式 先ほどまで解説していた「量子ビット」や「重ね合わせ」を使用するのが「量子ゲート方式」による量子コンピュータです。 古典コンピュータの 論理回路に量子力学の性質を取り込んだものだと表現できるでしょう。 IBMやGoogleが実用化へ向けて研究・開発を進めているのがこちらの量子ゲート方式。 実用化はまだまだ実現しそうにないという現状にあります。 ちなみに量子ゲート方式は 「量子回路方式」と表現されることも。 この点もしっかり押さえておきましょう。 組み合わせ最適化問題に特化している量子アニーリング方式 では、もう一方の方式である「量子アニーリング方式」とは何なのでしょうか。 こちらは1998年に東京工業大学の西森秀稔教授らが提唱した理論がベースになっている、 日本発のものともいえる考え方です。 扱える変数は 古典コンピュータ以下の2,000個程度でできることが限られます。 また、超低温状態を維持しなければならなかったりとデメリットに感じられる要素の多い方式ですが、こちらは既に実用化が実現しています。 量子アニーリング方式を用いた量子コンピュータの開発に成功したのは2011年にカナダのベンチャー企業であるD-Waveシステムズ。 D-Waveという量子コンピュータを作り、NASA、USRA、Googleによる検証の結果、古典コンピュータよりも1億倍高速であると発表されました。 できることが限られている分、古典コンピュータが苦手としていた 「組み合わせ最適化問題」に特化しているといわれており、実用化においても様々な活用方法が想定できます。 確かにできることは少ないかもしれませんが、 可能性に満ちた量子コンピュータであるといえるでしょう。 量子コンピュータのメリット では、量子コンピュータを実用化することによって生じる メリットは一体どういうものがあるのでしょうか。 従来の古典コンピュータの計算・処理能力の向上は、 やがて限界が来るといわれています。 しかし、量子コンピュータであれば その限界を遥かに超越した計算・処理能力を実現可能です。 古典コンピュータでは計算できなかったようなものや、膨大なパターンの組み合わせなどから最適なものを導き出すなどといった計算を瞬時に行えるようになるでしょう。 また 電力消費が少ないという特徴もあり、こちらもメリットだといえるでしょう。 量子コンピュータの実績 可能性に満ちている量子コンピュータですが、既にスーパーコンピュータ(スパコン)の計算速度を上回る実績を持っています。 Googleは以前「スパコンでは1万年かかる特殊な計算を量子コンピュータが3分20秒で計算した」と発表。 比較対象とされているスパコンは世界最高といわれているスパコンであるため、とてつもなく高速な計算を実現したと話題になりました。 対して、その計算は 従来のスパコンでも2日半で計算できるのでは?とIBMが批判したことも同時に話題にあがり、熾烈な競争をしている2社のライバル関係が垣間見えます。 IBMによる量子コンピュータ 量子コンピュータの開発・研究を積極的に行っているIBMが、 53量子ビットを実装している量子コンピュータを発表しています。 こちらは顧客向けに提供すると発表しており、 一般利用向けの量子コンピュータとしては最大規模のものです。 IBMの持つデータセンター 「Quantum Computation Center」内に設置されており、他にも20量子ビットのマシンを14台設置。 本気で量子コンピュータ開発に取り組んでいることがうかがえますね。 このように、IBMはクラウド向け量子コンピュータとして一般の顧客に対して提供をスタートさせており、開発を着々と進めています。 少しずつ一般層にも広まっていくことが予想できるでしょう。 日本における量子コンピュータの現状 IBMやGoogle、そしてカナダのD-Waveシステムズが量子コンピュータを研究していることは既にお伝えしました。 それでは、日本における量子コンピュータの現状はどうなっているのでしょうか。 量子アニーリング方式のベースとなっているのは日本の東京工業大学の教授らの提唱したもの。 このように、日本は研究段階が進んでいたとしても商用化において先ほどあげた海外企業らにリードを許しています。 とはいえ、日本企業は開発をしていないわけではありません。 NTTは 「量子ニューラルネットワーク(QNN) 」の開発に成功。 これは室温でも長時間運用が可能とされており、こちらも可能性を感じる新たな技術となっています。 理化学研究所のスパコン「Shoubu」より 100倍高速とのこと。 これは無償公開されており、以下のリンクからチェックできます。 興味のある方はぜひチェックしてみてください。 量子コンピュータによって起こり得るリスク 未来が楽しみな量子コンピュータですが、実は大きなリスクも眠っています。 それは「セキュリティにおける問題」です。 暗号が計算できてしまう 特に量子ゲート方式による量子コンピュータにいえることですが、 量子コンピュータは膨大な計算を高速で行うことが可能です。 その分 パスワードなどの解析も高速で行えてしまうということになります。 現在セキュリティでは特に公開鍵暗号方式が広まっており、セキュアなシステムおよびその運用を実現していますが、それが脅かされることになるということです。 というのも、セキュリティにおいて利用されている暗号は 、暗号鍵そのものは分からなくても計算すること自体は可能だからです。 公開鍵暗号方式は実は完全な秘密通信ではない そもそも世で広く親しまれている公開鍵暗号方式は、実は計算ができてしまいます。 しかし、現在流通しているような古典コンピュータではその 計算に膨大な時間がかかるから現実的ではありませんでした。 そのため公開鍵暗号方式は 計算量的安全性とされ、 完全な秘密通信とはいえない現状にあるということです。 量子コンピュータが世に浸透したらリスキーな世の中になる しかし、もしも量子コンピュータが実用化され一般層も気軽に扱えるようになったら、 簡単に計算できるようになってしまいます。 セキュリティを取り巻く状況が一変するともいえるでしょう。 常にリスクが付き纏った危険な状態にさらされることになります。 そのため、量子コンピュータの発展と同時にセキュリティ面も同時に発展していかなければなりません。 量子暗号(量子鍵配送)への期待 セキュリティ面の脅威にさらされる可能性があると紹介しましたが、当然新たな暗号方式も研究・開発が進められています。 それが「量子暗号(量子鍵配送)」というもの。 これは量子コンピュータに「解読されない」暗号とされており、非常にセキュアな通信だといわれている暗号通信です。 量子力学的な性質を利用することで第三者による鍵の盗聴を検知したり、盗聴量を計測することが可能とされています。 量子暗号通信が実用化される? そんな中、 東芝が2020年度の実用化方針を掲げています。 量子暗号通信が世の中に広まっていく未来も、そう遠くないのかもしれません。 仮に量子コンピュータが一般普及まで行かずとも、量子暗号通信が世の中へ広まっていけばより 安心したITライフを送ることに繋がります。 これからの技術の発展に期待して待ちましょう。 量子コンピュータの未来 今後も量子コンピュータに関しては様々な方式などで企業および国家間で激しい競争が繰り広げられることが予想されます。 とはいえ、未来が非常に楽しみな分野といえるでしょう。 量子コンピュータが仮に「完成」し、商用化などが実現すれば、生活や企業の商業活動が 一変する可能性すら眠っています。 それほどまでに 可能性に満ちているのが「量子コンピュータ」だということです。 これからの量子コンピュータの研究・開発の進展は、発表がある度にITメディアや業界では大きなニュースになっていくことでしょう。 量子コンピュータの動向から目を離さず、技術者として常に最新情報を仕入れられるようアンテナを張っておきましょう。 未来を創り出す量子コンピュータ 今回の記事で解説・紹介をした「量子コンピュータ」は、 未来を創り出すことのできる新世代のコンピュータです。 量子ゲート方式が実用化されるのがいつになるのかは分かりませんが、量子アニーリング方式の量子コンピュータは 既に実用化が実現しています。 導入事例もあり、既に世の中で活用されているということです。 「量子コンピュータの時代なんてまだまだ先の話」などとはもう言っていられない状況にあるといえるでしょう。 エンジニアとして、IT業界携わっている人材として、今後の量子コンピュータの発展や動向から目を離さずチェックしておくことは非常に重要です。 未来に繋がる量子コンピュータの進化をこれからも楽しみつつ見守っていきましょう。

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【量子コンピュータとは?】仕組みを中学生でもわかるように解説

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2019年度中を目途に、量子コンピュータが日本初上陸する。 東工大と東北大が形成する研究拠点に量子コンピュータ「D-Wave」本体が設置されるのだ。 これまでは海外に設置されたマシンにクラウド経由で接続していたが、格段に使いやすさが向上することで、民間企業と連携しながら、東工大の基礎研究と東北大の応用研究を掛け合わせた世界的な研究拠点への発展が期待されている。 世界規模で目覚ましい研究開発が進む量子コンピュータ分野において、半導体のシリコンを用いた基盤技術の開発に取り組んでいる小寺哲夫准教授。 量子コンピュータのさらなる進化に向けた研究の現状と展望を小寺准教授と学生2名にうかがった。 そもそも量子コンピュータとはどういうものなのか 小寺哲夫 工学院 准教授 電気電子系 電気電子コース/エネルギーコース 量子コンピューティング研究ユニット 2002年、東京大学 理学部 物理学科卒業。 2004年、東京大学 理学系研究科 物理学専攻修士課程修了。 2007年、東京大学 理学系研究科 物理学専攻博士課程修了。 2007年より東京大学 ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構特任助教、2009年より東京工業大学 量子ナノエレクトロニクス研究センター助教、2014年より東京工業大学 大学院理工学研究科 電子物理工学専攻准教授を経て、2016年より現職。 博士(理学)。 『木に学べ 法隆寺・薬師寺の美』 (西岡常一著) 「木の癖を見抜いて適材適所に使え、木を知るには土を知れ、木を組むには人の心を組め」 千年もつ木造建築のための棟梁としての心得は、先端科学技術者としての心得に通じる。 そう期待される量子コンピュータは、ナノサイズ(1 mmの100万分の1)、あるいはそれより小さなミクロの世界で働く物理法則である「量子力学」を原理とする全く新しいコンピュータだ。 なぜそこまで計算が速くなるのか。 運動の法則を基礎として構築された古典物理学を用いた従来の計算機はビットという単位を使い、情報は0と1の2進数で表される。 古典情報と呼ばれ、表裏が白黒の石でたとえると白か黒かの2通りの状態のみ存在する。 その情報を一つ一つ順番に処理していくため、情報が多くなれば計算に時間がかかってしまう。 一方、量子力学では白か黒かわからない重ね合わせ(両方の状態を同時に持っている)状態をつくることができる。 たとえば8個の情報を処理する場合、古典情報だと000から111まで3ビットのデータを8回計算する必要がある。 量子情報は8個の情報をひとつにまとめることができ、1回の計算で全て同時に処理することができる。 「従来型コンピュータの進化は限界に近く、ここ2~3年で急速に量子コンピュータへの期待が高まっていると感じます。 IBM QやD-Waveといったある種の量子コンピュータは実際に使われはじめていて、アプリケーションなどを考えるフェーズになっています」(小寺准教授) 研究開発が過熱する量子コンピュータの量子の材料として一歩リードしているのは超伝導体。 GoogleやNASAなどが材料に用いている。 ほかにフォトン(光子)、コールドアトム(冷却原子)、イオントラップなどが候補に挙がる中、小寺准教授が研究しているのが、超伝導体に迫る期待を集めている半導体のシリコンだ。 小寺准教授は早くから材料にシリコンを用いて量子ドットのデバイス開発を進めてきた。 研究しているシリコン量子ドットデバイスは、MOS(Metal〈金属〉、Oxide〈酸化膜〉、Semiconductor〈半導体〉)構造を利用している(図2)。 「既存のシリコンテクノロジーとの相性がよく、基本的なMOS型トランジスタを模しているため集積化に向いているんです。 量子ドットの作製方法として、まず熱酸化でSOI(Silicon-On-Insulator 絶縁体上のシリコン)層の厚みを制御する。 この手順で作製した二次元配置のシリコン量子ドットに関する論文が、2019年2月に米国物理学協会発行の学術雑誌で採用された(図3)。 ガスに高周波をかけてプラズマ化し、イオンやラジカルで半導体を加工すること。 目的とする膜の成分を含む原料ガスを供給して半導体薄膜などを成長させる方法。 同時かつ大量に処理でき、工程が簡易になる。 MOS構造を利用したシリコン量子ドットデバイス 図3. 二次元配置のシリコン三重量子ドット Accepted by Applied Physics Letters, to appear in 2019 量子ドットでは電子や正孔のスピンの状態を操作することができ、スピンの上向きか下向きを情報の0か1として使う。 その重ね合わせ状態をつくることが量子ビットの開発となる。 情報を担う電子スピンや正孔スピンは、材料そのものが持つ核スピンとの相互作用で乱されやすく、状態を維持するのが難しい。 そうした背景から近年シリコンが注目され、多くの研究者が移行してきている。 「私も学生時代はGaAs系を使っていましたが、その問題が生じるのは明らかだったので卒業後はすぐにシリコンに取り組みました。 核スピンに情報が乱されないというアイデアで一歩先んじたつもりです」(小寺准教授) 量子情報を維持できる時間(コヒーレンス時間)を長く保つことは大きなテーマの一つ。 スピンを乱す磁気的なノイズ、電気的なノイズ、熱雑音など低減すべきものはたくさんある。 材料、デバイス作製、測定、それぞれの部分でノイズを減らし、量子を保つための取り組みは多岐にわたる。 その中でシリコンは材料そのものの特性から磁気的なノイズが少ないというだけでなく、良質な酸化膜形成技術や微細加工技術等の既存技術が成熟しており、他の材料と比べてデバイス内の電気的なノイズも小さくできる。 また、微細な加工を行うことができるため、将来的な実用を考えれば大規模に量子ビットを集積しても冷凍機に入るサイズにできるというのは明確な強みだと言える。 量子コンピュータの開発は一研究室のテーマに収まらない広がりを持つ。 「得意な分野を持っているグループとの共同研究が重要」と考える小寺研究室の特色として、国内外のグループと長く築いてきた信頼関係がある。 国内では東京大学、理化学研究所、産業技術総合研究所、海外ではイギリスの日立ケンブリッジ研究所、オランダのデルフト工科大学などさまざまだ。 「たとえばオーストラリアのニューサウスウェールズ大学はシリコンの量子コンピュータに昔から大型の投資をしていて、近年本当に素晴らしい成果が出てきているグループです。 そうした突出した研究者と議論させていただいたり、意見を出し合う中で新しいアイデアが生まれたり。 一人の研究ではできないことなので、丁寧に人間関係をつくって、これまで継続してきたことを今後も公明正大にやっていきたいですね」(小寺准教授) 材料やデバイスだけでなく、回路、システム、ソフトウェアといったより幅広い分野の理解と連携もキーになる。 「研究を進める上で東工大の工学院 電気電子系にはそうした各分野に長けた先生が揃っていて相談がしやすいんです。 一つの系にこれほど多くの研究分野が揃っている大学は他にないかも知れません。 また、量子コンピュータは近年の大企業参入によって、基礎学術的な物理学のフェーズから産業化を見据えた工学のフェーズに入ってきています。 工学から産業化につなげるというのは東工大が最も得意とするところで、そこに長けた先生方も多くいらっしゃるという研究環境の良さを感じます」(小寺准教授) さらにがいることも東工大で研究を進めることの大きな追い風になっている。 西森教授は量子コンピュータにおける量子アニーリング方式の提唱者。 西森教授率いる量子アニーリングのプロジェクトにも参画し、D-Waveという量子アニーリングマシンを実際に使える環境があり、情報や問題点の共有が直接できることで、小寺准教授は自身が開発してきた量子ゲート方式に適した量子ビットを、量子アニーリング方式にも使えないかと思考が広がった。 さらに量子ビットの材料についても半導体だけでなく超伝導体も含めたテーマに取り組んでいく。 小寺准教授は「昨年度までは人工光合成やパワーデバイスなどエネルギー関係の研究をしていましたが、今は量子コンピュータに専念して研究室全員でこのテーマに取り組んでいます。 周りの研究開発のスピードも速いので、一点集中して加速して進めたいなと思いますね」と展望を語る。 運命の出会いから未来につながっていく 東大での学部時代に、量子力学の応用の授業で量子コンピュータという言葉を耳にしたのが小寺准教授の研究のはじまり。 「この難解な量子力学が実際に役立って、今のコンピュータを超えるものがつくれるんだ、と驚くと同時に面白そうだなって思いました」と当時を振り返る。 NTT物性科学基礎研究所へ見学に行き、そこで紹介された東大の樽茶清悟教授(当時)の研究室に入るため修士へ進学。 1人の外国人ポストドクターと量子ビットグループをつくって研究をはじめた。 博士号を取得して卒業した後、東大生産技術研究所の荒川泰彦教授(当時)の研究室で4月から特任助教となり、5月からイギリスに派遣されることになる。 その派遣先が日立ケンブリッジ研究所だった。 「そこでシリコンに出会って、シリコンとスピンを使った量子ビット開発をしようと思いついたんです。 樽茶教授のもとで学んで、荒川教授に派遣してもらったという流れがなかったら、今のテーマになっていないかも知れません。 まさに運命的な出会いでした」(小寺准教授) さらに赤い糸に導かれるように、日立ケンブリッジ研究所に来ていた東工大の小田俊理研究室の学生2人と出会い、次に助教として採用される小田研究室を知ることになる。 シリコン量子デバイスの研究をしていた小田教授(当時)から声を掛けてもらったおかげで、その後も東大、日立ケンブリッジと連携しながら研究を継続できたという小寺准教授は「本当に全部偶然」とはにかむ。 「そして昨年度まではの研究室でお世話になりました。 波多野教授は民間企業で精力的に研究を推進されてから東工大にいらっしゃった教授。 工学的な視点を持って研究を進めるやり方を指導いただきました。 これからの量子コンピュータ研究にとって必要不可欠な視点でした」(小寺准教授) 小寺研究室の学生は現在10人。 准教授と学生との関係や学生同士の風通しの良さを支えるのが、全体ミーティングと、週1回行われる1対1で何でも相談できる個別ミーティングだ。 小寺准教授自身が30年以上続けているバドミントンでの交流や、懇親会、研究室旅行も行う。 コミュニケーションをとれる研究室にしたいという想いからだ。 「外部との共同研究も、卒業後の進路で多いメーカーでの開発に携わるときも、すべて人間関係・信頼関係が大事だと思うので。 そこが至らないときだけは注意や指摘をするようにしています」(小寺准教授) それは自身のモットーでもあり、学生時代から様々な出会いに支えられてきたことがバックグラウンドになっている。 また、「研究でも新しいことに挑むこと自体を楽しんでほしいし、そのための基礎学力や教養を学ぶことももちろん大切です」とも言う。 「母校の高校生に向けて講演したとき、高校生たちは予定時間を大幅に超過するほど質問をしてくれて、同席した修士の学生もこんなに興味を持ってくれることに刺激を受けたそうです。 量子コンピュータの進化は日進月歩ですが、私もさらに研究を進めて、まずは精度の高いシリコン量子ビットを実現したいと思っています。 それと同時に、シリコンの分野で未だ判明していない集積化に適したデザインをいち早く提案したい。 研究室としてはデバイスに重点を置いていますが、配線、回路、システムといった分野の方々とも連携して、議論を重ねて、もっと上のレイヤーまで自分の研究室を持って行くことで、量子コンピュータに関わるすべてをテーマとしたいですね」(小寺准教授) そう語る小寺准教授の目には、「量子コンピュータをつくりたい」という強い意志が映っていた。 これからの時代を切り拓く未来のコンピュータは、その視線の先にきっとある。 学部の授業で扱わない分野なのでわからないことは多いですが、先輩や小寺先生は丁寧に教えてくださいます。 小寺先生は実験をどう進めるかのプロセスを大事にされる方。 英語でコミュニケーションをとる機会も多く、自分の可能性を広げられるように思います。 今は量子ドットが三角形状に3つ並んだデバイスを測定し、電流特性を評価する研究をしています。 今後は修士課程に進んでさらに研究を進めていきたいです。 2016年度以降の入学者は、工学院 電気電子系になります。 次世代を担う技術に触れて最先端の流れを感じとれる研究室 量子ビットの実現に向けた、量子ドット中での電荷のスピン操作の研究を行っています。 量子力学という新しい学問に非常に興味があり、量子コンピュータという言葉に惹かれて小寺研究室を志望しました。 もともとバドミントンを介して知っていた小寺先生は、コミュニケーションをとても大事にされます。 就職のため来年度から社会に出ますが、この研究室で培った知見や力をこれからも活かしたいと思っています。

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量子コンピュータとは?原理を一般人にもわかりやすく簡単に解説

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スポンサーリンク そもそもコンピュータとは何をしてくれるものなのか?その仕組みをわかりやすく解説 まずその前に「そもそもコンピュータとは何をしてくれる物なのか?」から説明してみましょう。 一言で言うとコンピュータとは「 入力をすると、それに応じた出力をしてくれる」ものです。 入力を「質問」、出力を「答え」と言い換えると分かりやすくなります。 「124X24」という質問をすると「2976」という答えを出してくれる訳です。 いわば「 質問を入れると答えを出してくれる箱」とイメージして頂ければ間違いありません。 実は現在のコンピュータでも量子コンピュータでも、この点は変わりません。 「質問を入れると答えを出してくれる箱」なのです。 違うのは「 答えを出すまでにかかる時間」つまり計算スピードで、現在のコンピュータとは比較にならないほど早く計算をしてくれるのです。 「124X24」というような簡単な質問であれば、現在のコンピュータでもすぐに答えを出してくれます。 ですが、例えば「 北海道の稚内駅から九州の鹿児島駅まで列車で行くとしたら何種類のルートがあるのか?」という複雑な質問になると、現在のコンピュータの処理では相当な時間がかかってしまいます。 それを量子コンピュータは「あっという間」に答えを出してくれるのです。 何故、そんなに計算速度が速く出来るのか、を出来るだけ簡単に説明してみましょう。 量子コンピュータの原理を簡単にわかりやすく説明すると パソコンやスマホを買う時に「 メモリー」という言葉が出てきます。 100GBとか400MBという形で表現されています。 何となく「多ければ多いほど良いのだろう」と思ってしまいますが、その通りです。 メモリーは多ければ多いほど良いのです。 ではメモリーとは何か? というと「 コンピュータが計算をするために使う場所」なのです。 そしてメモリーというのは総称名でメモリーは「 ビット」という物が集まって出来ています。 現在のコンピュータでは「1ビット」で表せる数字は、0か1のどちらか1つです。 つまり1ビットで2つの状態を表せる事が出来る訳です。 これを2ビットに拡大して考えてみますと、1ビットで2つの状態を表せるわけですから2ビットだと、00,01,10,11という4つの状態が表せる事になります。 このようにビット数が増えれば増えるほど表せる状態は増えていきます。 そして、現在のコンピュータとの根本的な違いはこの「1ビット」で表す事が出来る内容にあるのです。 現在のコンピュータでは1ビットでは0か1のどちらか1つしか表す事が出来ません。 1ビットで表せる内容が多くなれば必然的に処理能力は飛躍的にアップします。 量子コンピュータの早い処理能力の原理をわかりやすく解説 具体的に例題をやってみましょう。 「 1から5までの5個の数字をそれぞれ2倍して、すべて合計したらいくらになるのか?」 という質問を現在のコンピュータに入れてみたとします。 それぞれを2倍した場合の合計は?」という質問をすると、 「1なら2、2なら4、3なら6、4なら8、5なら10 全部足すと30」という具合に繰り返し計算する事無く一回で答えを出してくれるのです。 これは単純な問題ですから大した時間差は出ませんが、問題が複雑になればなるほど答えを出すまでの時間差は大きくなります。 現在のコンピュータは複雑な問題に対しては「しらみつぶし方式」に全てを計算するしか方法が無いのですが、量子コンピュータはビット情報の多量さを利用して複雑な問題でも一回の処理で答えを出してくれるのです。 現在のコンピュータなら10日かかる計算を量子コンピュータは5分くらいで終わらせられるとも言われています。 まとめ 量子コンピュータは、まだまだ開発途上でカナダのDWAVE社が世界初と銘打った商用利用機を発売していますが、本来は複雑な問題に対して力を発揮する物ですので、簡単な問題の計算をするための物ではありません。 それなら現在あるコンピュータで十分なのです。 量子コンピュータが実用化されるようになるには、まだまだ相当な時間がかかるでしょう。

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